インドネシアのプレセール不動産:投資家が負う3つのリスク

インドネシアで建設中の不動産を購入することは、早い段階で安く案件に入れる手軽な方法だと受け取られがちです。しかしSNSの美しい完成予想図の裏には、厳しい現実があります。裁判で争われる類型のうち少なくないものが、プレセールという販売方式に直接関係しているのです。
実際のところ、インドネシアでプレセール物件の購入を検討する投資家は、案件の主導権がデベロッパー側に完全に残ったまま、金銭的なリスクだけを引き受けることになります。「購入者は支払ったのに、デベロッパーは姿を消した」という事態が典型例になっているのは、建設前販売という法的な構成そのものが、当初から購入者に十分な保護を与えていないためです。プレセールのヴィラのリスクを考えるうえでは、こうした投資のかたちに参加することが実務上どのような結果につながるのかを理解しておくことが重要です。
インドネシアにおけるプレセールをめぐる紛争は、驚くほど規則的に繰り返されています。長年の実務を通じて、弊社は典型的な3つのパターンを整理しました。
パターン1:引き渡しの遅延と債務不履行(wanprestasi)の落とし穴
裁判に至る最も多いきっかけは、案件が公表されたスケジュールに収まらないことです。購入者は引き渡しを早めさせるか、支払った資金を取り戻そうとします。
法的な現実: 形式的には、これはインドネシア民法典(KUHPerdata)第1243条にいうwanprestasi(契約上の債務不履行)に該当します。
最大のリスク:裁判所が判断するのは、契約の形式的な条件と、あなたが支払いを行った事実だけです。デベロッパー側の違反は比較的容易に認められますが、返金できるかどうかは別問題として残ります。案件が資金難に陥っていれば、判決があなたに有利であっても、経済的な結果はそれと一致しません。
パターン2:物件の仕様の一方的な変更
実際の工事が始まった後、デベロッパーが間取り、実際の面積、内部の設備、さらには複合施設全体のコンセプトまで変更し始めることは少なくありません。当初の条件と完成予想図を前提にしていた購入者は、出来上がった物件が期待と異なるという現実に直面します。こうした紛争もインドネシアの一般裁判所で繰り返し争われています。
パターン3:工事の凍結と資金調達モデルへの依存
最も深刻なのが、工事が完全に止まるケースです。出資者間の対立、債務、単純な資金不足によって、デベロッパーが案件を凍結することがあります。
法的な現実: リスクは資金調達のモデルそのものに組み込まれています。島内の多くの案件は、次の区画へ新しい購入者を継続的に集めることで成り立っています。投資家の流入が細れば、デベロッパーはただちに工事を続けられなくなります。これにより購入は、堅実な投資ではなく、デベロッパーの資金繰り全体の安定性に完全に依存するものになります。
最大のリスク: 購入者の手元には契約書だけが残り、実体のある資産はありません。判決が有利に出ても、その執行という問題は残ります。デベロッパーに換価できる資産や財産がなければ、返金を受けることはできません。
投資家にとっての実務的な結論
建設前販売(pre-sale)の段階で不動産を買うことは、完成した物件の取得ではなく、履行のリスクを伴う案件への参加です。建設の段階が早いほど、不確実性は高くなります。
美しい完成予想図と高い利回りの約束は、インドネシアの実務では引き渡しを保証しません。問題が生じるのは、その裏に、購入者が十分な法的保証のないまま工事を全額まかなう構造があるときです。取引前の詳細な調査には、デベロッパーが案件を完成させられるかどうかの確認、すなわち資金計画、これまでの引き渡し実績、現在抱えている訴訟、土地の権利関係の確認が含まれるべきです。
契約に署名する前に自分を守るには
契約書の法的な精査は、プレセールの段階で、資金がデベロッパーに渡る前に保証を確保できる唯一の手段です。確認する内容には、物件の引き渡し条件、不履行の場合の返金の手順、土地のステータス、デベロッパーの法的な履歴が含まれます。
出典:
インドネシア民法典(KUHPerdata)第1243条 https://peraturan.bpk.go.id/ および https://www.hukumonline.com/













