インドネシアの部下が「Yes」と言って動かない理由:経営者の手引き

指示を出すと、チームは笑顔でうなずき、口をそろえて「Yes, Boss」と言います。そして期限になっても……何も報告がありません。確認すると、手つかずのままか、あるいは手をつけないほうがよかったような出来になっています。最初は驚き、次に腹が立ち、インドネシアで半年も暮らすころには、消耗するようになります。

Legal Indonesiaには、経営者の方から同じ言葉がよく寄せられます。「うちのスタッフは怠けているだけだ」と。しかし多くの場合、原因は従業員の能力の低さではなく、これまでのやり方がインドネシアの考え方や労働法の特徴を考慮していないことにあります。バリ島でチームが力を発揮するには、文化的な前提を理解することと、法的な土台を知ることの両方が必要です。

事例:バリ島のサービス業と、管理上の構造的な誤り

サービス業(ヴィラとバイクのレンタル)のオーナーからご相談がありました。チームはすべて現地スタッフです。よくあるお悩みでした。「みんな良い人で、礼儀正しく、真面目なのに、出てくる結果は混乱ばかり。いつも『Ya』と言うのに、最後には『Sorry ya』なんです」。

監査を行ったところ、典型的な状況が見えてきました。

  • 指示が「その場限り」:口頭や音声メッセージで伝えられている。

  • 期限が「あいまい」:口では言うものの、どこにも記録されていない。

  • 責任の所在が不明確:「みんな、これをやっておいて」であって、「カデック、これはあなたの担当です」という具体的な指名になっていない。集団を重んじるのは文化の強みでもあるため、個人の担当者を決めなければ、仕事は人から人へ「渡り歩いた」末に消えてしまいます。

  • 反応がない:理解できていなくても質問をしない。

文化のずれ:なぜ一般的なマネジメントが機能しないのか

最大の誤りは、欧米型の管理モデルをそのままインドネシアの考え方に当てはめようとすることです。インドネシアでは、はっきりした拒否は対立とみなされ、避けられる傾向があります。そして上司は逆らう相手ではありません。実現できない指示を出しても、従業員は敬意あるいは恐れから同意するのであって、実行できるから同意するわけではないのです。

また、上下関係が明確な職場では、能力がないと見られるリスクがあるとき、従業員は上司に反論したり確認の質問をしたりしません。インドネシアでは「面子を失うこと」(malu)への恐れが非常に強いのです。「分かりません」「間に合いません」と言うのは、負けを認めることに等しい。それなら「はい」と言っておいて、あとは何とかしよう、となります。結果として同意は、仕事を理解し期限内に実行するという確認ではなく、円滑な関係を保つための作法になってしまいます。

もう一つの要因が、体系的な受け入れ研修の不在です。バリ島ではよくあることですが、新しい従業員は業務の概略を教わると、そのまま独力で働き始めます。基準は文書化されず、期待される成果の水準も説明されず、評価の指標も示されません。

留意すべきなのは、現地の学びの文化が、文章のマニュアルを読むことよりも「やって見せる」という視覚的な手本に基づくことが多い点です。実際の例や動画の手順書がなければ、従業員は仕組みではなく推測に頼ることになります。

やがて問題は恒常的になります。仕事が抜け落ち、経営者は手作業での管理を強めざるを得なくなり、チームは自律性を失います。その先にあるのは、人材の離職か、オーナー自身の疲弊です。こうした状況で人を入れ替えても効果はあまりありません。新しい従業員も同じ環境に置かれ、すぐに以前と同じ行動をとるようになるからです。

機能する仕組みをどうつくるか:5つの原則

「Yes, Boss」を実際の成果に変えるには、管理のやり方そのものを変える必要があります。

  1. WhatsAppは絶対。インドネシアではメッセンジャーがCRMの役割を果たします。どんな指示も必ずテキストで残してください。事業を守るためには、案件ごとに別のグループをつくり、指示の履歴が残るようにすることをおすすめします。

  2. 仕事には名前をつける。集団での責任は機能しません。必ず特定の個人に依頼してください。現地の文化では、部署あての一般的な指示よりも、上司からの個人的な依頼のほうが優先して実行されます。

  3. Check-in(途中確認)。期限まで待たないでください。前日に「進み具合はどうですか。手伝いは必要ですか」と聞くこと。これはマイクロマネジメントではなく、困ったときに従業員が「面子を失わず」に済むようにする支えです。

  4. 手順書(SOP)。基本的な業務を文書にしてください。手元に手引き(できれば写真や動画つき)があれば、間違えることへの恐れは消えます。

  5. KPIはゲームのように。インドネシアの人は分かりやすいルールと報奨を好みます。ここでは、厳しい罰則よりも、目標達成に対する公の場での称賛のほうが効果的なことが少なくありません。

おわりに

インドネシアでチームがうまく機能するかどうかは運の問題ではなく、現地の法律と考え方を踏まえて組み立てられた仕組みの結果です。圧力で問題を解決しようとすれば、たいていは信頼の低下と離職につながります。分かりやすいルールを示したとき、従業員の生産性は上がります。

チームが「力不足」に見えても、すぐに人を入れ替えようとしないでください。まずは業務プロセスと雇用契約の点検から始めましょう。Legal Indonesiaは、お客様の利益を守り、バリ島での組織運営を予測可能で適法なものにするHRの仕組みづくりをお手伝いします。

Sari Desty S. Sianturi

HRエキスパート、Legal Indonesia

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