全額支払っても不動産を失う5つのシナリオ(インドネシア)

バリ島の不動産市場は活況が続いており、それに伴って、購入者が投じた資金や物件そのものを失うケースも増えています。ヴィラを見つけ、契約書に署名し、代金を支払えば、あとは時間の問題だと考えたくなるのは自然なことです。海はすぐそば、工事は進んでおり、プロジェクトの担当者とも連絡が取れている。何が問題になるというのでしょうか。

しかし実務では、まさにここから最も多い失敗が始まります。バリ島で不動産を失うケースは、あからさまな詐欺のかたちを取ることはまれです。多くは、一見すべて問題がないように見えながら、取引の法的な構成が当初から弱いという状況です。そしてある時点で、それが自分に有利に働かなくなります。

インドネシアの判例には、バリ島の投資家が繰り返し直面している典型的なパターンが表れています。

1. 建設段階で購入したが、工事が止まった

バリ島では典型的な話です。美しい完成予想図、自信に満ちたデベロッパー、8〜12か月後の引き渡しの約束。外国人購入者の多くは、まさにこの段階でプロジェクトに入ります。 購入はPPJB(売買予約契約)によって行われます。法的には、完成した不動産ではなく、それを建てるというデベロッパーの義務を購入しているということです。

プロジェクトが止まったり大幅に遅れたりした場合、購入者はwanprestasi(債務不履行)を主張できます。インドネシアの裁判所はこうした紛争を日常的に扱っており、デベロッパー側の違反を認めることも少なくありません。

しかしその先に本質的な問題があります。実際に回収できる相手がいるのか、という点です。判決があっても返金は長引くことがあり、デベロッパーに換価できる資産がない場合もあり、回収そのものが別の難しい手続きになります。つまり、裁判での形式的な勝利が、必ずしも投資の実際の回収につながるわけではないのです。

例:

ある外国人投資家が、チャングー地区で基礎工事の段階のヴィラを購入しました。工事は最初の4か月は活発に進みましたが、その後止まりました。デベロッパーは一時的な資金繰りの問題だと説明しました。裁判所は契約違反を認めましたが、判決を執行する段階では会社はすでに営業しておらず、資産も外部に移されていました。実際の回収は不可能でした。

2. デベロッパーの財務破綻

デベロッパーに深刻な財務上の問題が生じた場合、PKPU(Penundaan Kewajiban Pembayaran Utang、債務の弁済猶予・再建手続き)が開始されることがあります。この時点で購入者の立場は根本的に変わります。所有権の登記が済むまで、購入者は物件の所有者とはみなされず、請求権を持つ債権者として扱われます。

購入者が善意と認められたとしても、それによって銀行、担保権を持つ債権者、請負業者に優先するわけではありません。結果としてデベロッパーの資産は法律で定められた順位に従って配分され、購入者が受け取れるのは投じた資金の一部にとどまるか、まったく補償を受けられないこともあります。

例:

外国人投資家のグループが、利回りが保証されたアパートメント複合施設に出資しました。1年後、デベロッパーはPKPUを申し立てました。投資家は債権を届け出ましたが、債権者名簿では銀行と請負業者の後に置かれました。最終的にプロジェクトは再建され、投資家への支払いは投じた資金の30%未満にとどまりました。

3. 「いわくつき」の土地、あるいは土地の権利をめぐる争い

完成済みの物件であっても、法的な安全が保証されるわけではありません。インドネシアの土地制度では、証書の二重発行、相続人間の対立、登記上の誤り、第三者(たとえば地域共同体)からの主張といった紛争が起こり得ます。

こうした争いが購入から数年後に生じることもあります。裁判所が権原を無効と判断すれば、代金を支払い実際に使用していたかどうかにかかわらず、購入者は物件を保有する法的な根拠を失います。

例:

ある外国人購入者が、リースホールドを設定したヴィラを購入しました。数年後、以前の土地所有者の相続人から主張が出されました。裁判所は当初の土地登記に問題があったと認定し、権原の一つを無効と判断しました。その結果、賃借契約は効力を失い、物件は法的な紛争の対象となりました。

4. 名義貸しによる不動産の保有

これはバリ島の外国人にとって最も危険な領域です。土地の直接所有(フリーホールド)が制限されているため、名義貸しの仕組みがよく使われます。物件をインドネシア国民の名義で登記し、投資家は付随する契約によって支配を確保する、というものです。

実際に資金を出した投資家は資産を「支配している」と考えますが、法律上の所有者は証書に記載された人物です。関係が悪化したり裁判になったりすれば、裁判所はこうした仕組みを法律に反すると判断することがあります。

その場合、法的な意味を持つのは登記された所有権だけです。名義上の所有者が権利を保持し、実際の投資家は資産の支配を失います。バリ島では珍しいことではありませんが、販売資料で語られることはほとんどありません。

例:

ある外国人投資家が、インドネシア人のパートナー名義でヴィラを登記し、付随する契約書を取り交わしました。関係が悪化した後、名義上の所有者は義務を認めることを拒みました。裁判で権利を守ろうとしましたが結果は得られず、取り決めは法律に適合しないと判断され、所有権は名義人のもとに残りました。

5. 用途地域と許認可の問題

もう一つの大きなリスクが、物件が用途地域の要件を満たしているか、必要な許認可(PBGやSLFを含む)を備えているかという点です。バリ島には、土地の用途が実際の使われ方と一致していない、許可の取得に不備がある、書類が完全に整っていない、といったプロジェクトが存在します。

初期の段階では問題にならないこともあります。しかし検査、行政方針の変更、紛争が起きた際には、深刻な結果を招き得ます。使用の制限、適法な賃貸ができなくなること、制裁金、場合によっては取り壊しの要求に至ることもあります。

購入者が善意であること自体が、こうした結果を避ける理由にはなりません。知らなかったという事実も、法的には何の保護にもなりません。

例:

ある購入者が、盛んに賃貸されていたヴィラを購入しました。2年後、その地区で用途地域の検査が始まりました。土地が商業利用を認めない区分に属していることが判明しました。所有者は賃貸の停止を命じられ、適法化を試みたものの、結果の保証がないまま多額の追加費用が必要になりました。

あらかじめ理解しておくべきこと

バリ島で売られているのは、不動産そのものというより保有の仕組みであることが少なくありません。そして守られるかどうかを決めるのは、まさにその仕組みです。所有権が将来はじめて発生する、土地の法的調査が十分に行われていない、複雑または法的に疑義のある保有形態が使われている、デベロッパーの財務が不安定である。こうした場合、リスクはすでに取引の構成そのものに組み込まれています。

裁判所が違反を認めることはあっても、それが投資を取り戻せることを意味するとは限りません。

実務的な考え方

バリ島で不動産を購入する際には、物件そのものだけでなく、法的な流れ全体を検討することが重要です。それが投資なのか、それとも将来の法的紛争なのかは、まさにこの段階で見えてきます。

Legal Indonesia 法務部門エキスパート

I Gusti Ayu Bitari Karma Gita

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